April JAPAN FANMEETING 2016 ~The First Fairy tale~@豊洲PIT(ライブ・レポート)



2015年8月に韓国でデビューしたApril。KARAの所属事務所であるDSPメディアが手がける5人組ガールズ・グループです。同時期にデビューした新人ガールズ・グループに先がけての初来日ファンミーティング!めでたい!ということで、夜の部のみ参加してきました。

MCにヨンジが起用されたこともあり、おそらくKARAのファンがかなり来ていたと思われる客層で、男女比8:2くらいの印象。主に30代以上のおじさんと若い女性という構成だったと思います。

■Aprilのステージパフォーマンスの「品の良さ」

初めて生で見たAprilのステージパフォーマンスは、洋菓子のような小気味の良い上品さがあり、メンバーそれぞれが小柄で細身である身体性も含めて、他のKPOPガールズ・グループと較べても「ティーンアイドル」という印象が強かったです。とっても若い!しかしながらその「若さ」が「品の良さ」としてあるのは、振付けやフォーメーション、衣装、そして何より良質なアイドルポップスである楽曲群の完成度の高さによって成り立ってる部分が大きいんじゃないかなと思いました。

ヒョンジュは二次元

さてここから、ファンミならではの質問コーナーやファン参加型の企画を通して、個々のメンバーの印象が否応なしに刻まれていきます。

まず私にとって圧倒的な存在感を放っていたのは、ヒョンジュでした。「メンバーのイメージカラーは?」という質問に真っ先に「ぴんくぅ!」と先手を打ち、「日本で食べたいものはありますか?」の質問に間髪入れず「ぜんぶぅ〜」と答えるヒョンジュには、発言権という概念はありません。自由です。で、そろそろ私にもこの言葉を解禁する時がきたんですよ。ヒョンジュはバブみに溢れてる。そしてヒョンジュは二次元であり小宇宙(コスモス)です。

ヒョンジュのインパクトに心を奪われてしまって、その後もずーっと見てたんですが、ヨンジからAprilに日本でおいしかった食べ物を教えてもらったかどうか聞かれて、「もんしゅしゅ〜〜」(堂島ロールのこと)ってまた一人フライングで答えたんですけど、言い方がほんとバブいんですよ。客の誰かが口笛を鳴らしたら「ぴうぴう♪」と、なんの躊躇もなく自由に応答してバブります。何者なんでしょうか。

ここまでやると「ぶりっ子」疑惑が浮上してしかるべきなんですが、ヒョンジュは二次元なので全く当てはまりません。というのも、カバーダンスコーナーで選ばれたチームが踊ってる姿をAprilのメンバーたちが後ろから見てたんですけど、そのときヒョンジュは、無意識に両手を顎の下で合わせて「祈るように」じーっと見てたのね。たぶんヒョンジュにとっての「ステージ」は、「アイドル」のために準備された特別な空間なんだと思うんですよ。「ステージ」そのものが二次元のような空間で、実際どうかはわからないけど、小さい頃に「アイドル」に憧れて「ああなりたい」と願って、その憧れのステージで自ら「アイドル」として踊っている。そんなふうに見えました。

純粋にダンススキルという観点から見たら、ヒョンジュは動きが小さくて柔軟性にも欠ける。おそらく他の事務所だったらスキル面からデビューはできなかったと思います。ヒョンジュのダンスは、他のメンバーの動きに完全にシンクロするというより、たとえばピンク色のオーラを纏いながら、同じステージでも異次元の小宇宙のなかで一人で踊ってるんですよ。そこにヒョンジュのアイドルとしての強度がありました。

■メンバーの印象から改めて見るAprilのステージパフォーマンス

このままだとほとんど「ヒョンジュ論」になってしまいそうなので、いい加減ほかのメンバーの印象をざっといきます。雑です。

チェウォン
  • 音源で聴くとジンソルのほうが印象的だけど、生でパフォーマンスを見ながら聴くとボーカルの中心はやはりチェウォン。
  • パンチ力のある個性的な声。Aprilの土台
  • 想像以上にかわいくなってた!
  • ちゃんとアイドルやってて安心した
イェナ
  • イェナの落ち着きは横綱級。動かざること山の如し
  • 「あと1曲になってしまいました」「えー!」のお約束のやりとりのあと「はいMuahです」と、通常の低テンションで覚えた日本語のセリフを淡々と述べる強みおそるべし
  • 握手会で間近でみたら美人すぎて驚いた
ナウン
  • セクシーだとおどけてみせたり、一歩ひいて自らの「ひょうきん」を繰り出すタイミングを計っている真面目さ
  • 他のメンバーも小さいのにさらに小さい顔と細い手足
  • いつなんどきも絵になる華がある
ジンソル
  • 映像で見た印象そのまんまなのある意味すごい
  • リアリティ番組等における奔放さのイメージと比較するとステージでは意外にもバランサー

こういった各メンバーの印象がある程度生まれたうえで、改めてAprilのステージパフォーマンスを捉えると、歌においては、ジンソルの声が基調をつくりチェウォンのボーカルが土台の位置から「ピリリ」と個性を効かせる。そこにヒョンジュの二次元ボイスが飛び道具になる。
ダンスにおいては、Aprilのパフォーマンスの「品の良さ」は、ヒョンジュの「アイドル性」という異次元にチョイとつままれた磁場のうえにあって、それが浮きすぎないようにイェナが強力な重力となってつなぎ留めるなか、ナウンが華を放ち、ジンソルの三日月笑顔がポップさを体現する。
Aprilの「品の良さ」の印象をもう一歩踏み込んでいくと、たとえばこんなふうに成り立っているような印象でした。


Fin.K.L「Forever Love」の日本語カバーに垣間みた可能性

しかしそんな感じのバランスが良い意味で崩れ、Aprilのポテンシャルが垣間見えた曲がありました。後半に披露したDSPの大先輩であるFin.K.Lのカバー「Forever Love」。しかも日本語です。
おそらくこの曲だけ生歌かカブせが多かったんだけど、日本語で歌ったときの声質が素晴らしかったんですよ。ある種の被膜に覆われた鑑賞されるものとしての「品の良さ」から、観客へ届けるためのパフォーマンスへ変貌する可能性を感じました。何より日本語での歌声のハーモニーが素晴らしいです。Aprilはダンスより、やはりボーカルアイドルグループとしてのポテンシャルがすごく高いと思えたステージでした。


DSPアイデンティティを受け継ぐAprilとこれからのApril

Aprilのデビュー曲「Dream Candy」の作曲は、韓国でも有名なポップスメーカーであるファン・ソンジェ。最新曲「Snowman」は、Mono Treeが作曲を引き受けています。このMono Treeは、KARAやRainbowのサウンド面でのアイデンティティを作り出してきたSweetuneから、2014年に独立したプロデューシングチームです。
Aprilのデビューからの歩みは、ポップス職人が作ったアイドル曲を綺麗に消化して見せるグループとしてあると思います。大衆的な人気は得ていないまでも順調な滑り出しで、楽曲的には日韓共に通好みな受け入れられ方をしてきたという印象です。
KARAのカバー曲として同じくファン・ソンジェ作曲の「ジェットコースターラブ」が選ばれたのは全くもって正しくて、今のところAprilのアイデンティティは良質なアイドルポップスを上手に体現するプレイヤーなのではないでしょうか。

しかし、そもそも韓国においても、チェウォンのR&Bボーカリストとしての魅力は温存されたままです。チェウォンはインタビューで「色んな声をだせる」と自ら言ってる通り、いまはアイドルポップスに合わせたキュートな声で歌っています。そして今後のAprilは、おそらくどこかの段階でチェウォンのボーカルを全面に押し出すときがくるでしょう。
特に日本においては、これからのファンミーティングや単独ライブで、チェウォンのソロが披露される機会があれば、あくまで「KARAの妹分」として見にきているファンを、「Aprilそのもののファン」に換えることができると、私は信じてやみません。それほどチェウォンの歌声には、生歌でしか伝えることができない不思議な魅力があります。


KARAを受け継ぐグループとしてのApril、そしてKARAにはなかった色を出せるポテンシャルのあるグループとして、今後のAprilの活動に注目しています。


セットリスト
  1. Dream Candy
  2. Knock Knock
  3. Thriller
  4. Snowman
  5. Glass Castle
  6. Muah!
  7. Forever Love(Fin.K.Lカバー:日本語)
  8. ジェットコースターラブ(KARAカバー)